忘れがちですが、癌は「全身の病」です。
全身の各部位では、毎日何億個もの細胞が新しい細胞に生まれ変わっています。
細胞分裂の過程で、異常な細胞が生まれたとしても、通常は私たちの身体にいる免疫細胞がそれを排除してくれます。
ところが、何らかの原因で免疫細胞の力が衰えると、異常な癌細胞が急速に増殖していきます。
したがって、癌の治療では局所のみではなく免疫力を上げていくことが大切です。
癌の進行や再発を防ぐために、身体全体をみていく東洋医学の考え方が有効です。治療のポイントを解説します。
1.冷えない身体をつくる
癌細胞が好む環境は、冷えていて酸素の少ない場所です。そこで、冷えない身体をつくることが大切になります。血流を良くし身体を温めることで、血液にのって免疫細胞や酸素が身体すみずみまで巡るようになり、免疫力が上がります。
● 身体を温めるには?
人間のエネルギー(熱)は、食べ物を消化・吸収することで作られます。したがって、食事の栄養を吸収する力をつけることで、約60兆個ある細胞のひとつひとつがエネルギー(熱)を作り、身体全体を温めます。根本から身体を温めるために、東洋医学ではまず、しっかりと消化・吸収できる身体づくりをしていきます。
例えば、抗がん剤治療に漢方薬を併用することで、抗がん剤の辛い副作用を抑え、しっかりと消化・吸収できる身体をつくることができ、身体を温め免疫力を上げることに繋がります。
2.気・血・水の滞りをなくす
代謝が悪く細胞の動きが滞った状態が続くと、その細胞が病理産物になります。活動が停滞した細胞には、冷えて固まる性質があります。この塊が、さらに代謝を悪くして悪循環になります。
心臓と小腸は、癌細胞が極めてできにくい臓器だと言われていますが、その理由の一つに代謝が良い部位であることがあげられます。心臓には常に新しい血液が環流し、全身に血液を送るポンプとして、休みなく動きつづけています。
また、小腸には食べ物から悪い物を吸収しないために、免疫細胞が多く存在することもありますが、小腸粘膜じたいも、強い吸収能力を維持するために、新陳代謝が非常に盛んな臓器です。
東洋医学的にみても、心臓と小腸には密接な関係があり、体を温め血をめぐらせる原動力となる臓器とも言えます。
つまり、滞りにくい身体をつくり代謝をあげていくことが、進行・再発予防にとってもう一つの大切なポイントになります。
東洋医学の治療原則のひとつに「扶正祛邪(ふせいきょじゃ)」という考え方があります。
「扶正」とは、人がもともと持っている、正常に戻ろうとする力を高めること。
「祛邪」とは、人体に害を及ぼすものを取り除くこと、です。
同じ病気やお身体の悩みを抱える人でも、その人それぞれの持っている力や状態は大きく異なります。一人一人、その時その時、の状態に合わせて、最善の方法を考えていくことが、東洋医学で身体を考えるうえでの大原則です。
冷えない身体づくりも、気血水の巡りを良くするのも、東洋医学の得意分野です。
同じ東洋医学の理論に基づいた、漢方薬と鍼灸施術を併用していくことで、身体の中と外、両方から身体を整えることができ、高い効果が得られます。
世珍堂では、病院で現在行っている治療や服用薬を踏まえたうえで、状態に合うものをご提案いたします。お困りの際は、ご相談にいらしてください。